ソムタム
アパートの近くに、とっても安くておいしいガイヤーン(タイ風鶏の丸焼き)のお店がある。店先で竹串に刺した鶏がずらっと炭火で焼かれていて、煙がもうもうとあがっている。その奥に食べるところがあって、席数はそこそこあって広いけど、屋根があるだけで建物はない。お持ち帰りする人も多くて、バイクが次々とやってくる。
お店は家族でやっているみたい。お父さんが鶏を焼いて、お母さんがソムタムという青パパイヤのサラダを作る。お兄さんとお姉さんが、これから焼く鶏を運んできたり、お店周りの雑用もしつつ、オーダーを取ってくれる。店の奥には小あがりがあって、そこではおじいさんとおばあさんが、金だらいいっぱいにソムタム用の青パパイヤを刻んでいる。ただひたすらに刻んでいる。
その刻みっぷりがあまりに見事で、思わず見入ってしまう。左手に青パパイヤを持って、右手で包丁を叩きつけるようにして刻んでいく。ずーっとずーっとこうやって刻み続けているんだろうな、と思いながら見ていると、なんだか胸に迫るものがある。当たり前みたいにひとつのことをやり続けている人を見ると、なんでもすぐに手を出してみてはやめてしまう自分がちょっと恥ずかしくなるのかもしれない。
そんなことを思いながら、鶏にかぶりついて、ソムタムをいただく。とてもおいしい。