ルアンパバーン④ゆるゆる寺巡りと、ハルキを読むベトナム青年
さすが古都というだけあって、小さなルアンパバーンの街は寺だらけ。
メインストリート沿いに立派なお寺がいくつもあるし、路地裏にもゆるーい感じのお寺が点在する。
夕方になると、お坊さんがシンバルと太鼓でシャンシャンどんどんと、なんともかっこいい音を奏でる。
洗濯物も絵になる...
敷地に入ってみると、ゆるーい感じの仏像が庭に無造作に置かれていたりする。
葉っぱと表情のコラボレーションが絶妙...
しなだれかかる角度が絶妙...
一時期、いとうせいこうとみうらじゅんの『見仏記』を読んで、仏像を見に行くのにはまったことがあった。『見仏記』はTV番組やDVDなどで映像化もされている。仏像を、このポーズがたまらん、とか、マニアックな視点で鑑賞するという紀行文。ルアンパバーンのお寺は、まさにそういう楽しみ方ができる。
村上春樹の、『ラオスにいったい何があるというんですか?』にも、ルアンパバーンのとあるお寺で見かけた、お猿さんの像のエピソードが出てくる。路地裏にある小さなお寺に、なんとも愛嬌のあるお猿さんの像があって、それが気に入ってついつい何度も足を運んでしまった、という話。本の中には、お寺の名前も詳しい場所も、写真もない。どんな像だか気になるではないか。というわけで、これはどうしても見に行きたかった。
ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集 (文春文庫 む 5-15)
本当は、ヒントもなにもナシで、街の中をぐるぐる回って探すべきだった。でも悪い癖だ。ちょこっと検索したら、すぐ画像が見つかってしまいました... 場所もなんとなくあたりがついたので、多少は迷ったけど、比較的簡単にたどり着いた。実物はほんとになんともかわいくて、あー見に来てよかった、と思ったけど、ヒントなしできたらもっと感動しただろうな... ものすごくズルした感じでちょっと後悔。
というわけで、場所も画像もここには載せません。ルアンパバーンに行ったら、ぜひぐるぐるして探してみてください。
でもここからがルアンパバーンマジック。この日は昼前に空港に行かなければいけないので、お猿さんを見に行ったあと、最後にメコン川を見下ろせるカフェにコーヒーを飲みに行った。
カウンター席のとなりにアジア人の青年がやってきて、ペーパーバックを取り出して読み始めた。何を読んでるのかな、とチラ見すると、村上春樹の『Norwegian Wood』だった。おー、ハルキ読んでる。話しかけたい!読書の邪魔しちゃ悪いかな、と思いつつ、「村上春樹、私も好きなんだよねー」とついつい話しかけてしまった。
「あ、そうなんですね。まだ、この本は読み始めたばかりで。これまで、ほかに4冊読んでます。『Colorless Tsukuru 』と、『After the Quake』と、『Kafka on the Shore』と、『A Wild Sheep Chase』。あと、太宰治も何冊か」
彼はハノイ出身のベトナム人で、今はルアンパバーンの旅行会社で働いているらしい。何がきっかけで春樹を読むようになったの?
「もともとはノンフィクションや紀行文が好きで、小説はあんまり読んでなかったんですけど、日本人の友達に勧められて読んだらおもしろくて」
今まで読んだなかでどれが好きと訊いてみると、「どれも面白かったけど、多崎つくるが好き。一番リアルな感じがするから」とのこと。ノルウェイの森も、ファンタジー系じゃなくてリアリズム小説だから、気に入るかも。多分、日本では村上春樹の中では一番有名な小説かもしれない、というと、
「そうですよね。だからあえて、一番有名なのから読むのはやめようと思って後回しにしてました」
ぜひ『ラオスにいったい何があるというんですか?』も読んでほしいけど、これは翻訳されていないんだよね。残念。エッセイももっと英訳されるとよいのになー。
そろそろ空港に行かなければならないので、「読書の邪魔してごめんね」と席を立った。旅行中ってこういう偶然があるからおもしろい。今日も点と点がつながった感じがします。