いろんなところに住んでみる

旅の楽しみは、知らない街の日常を見ること。というわけで、いろんなとこで「ちょっとちょっと暮らし」してみます。どんなところに住めるのかなー?2018年、チェンマイ→台北→フィレンツェ→はたまたチェンマイ。2019年は...春はカミーノ(スペイン巡礼路)からのポルトガル。夏は日本。秋冬はスウェーデン。2020年夏からしばらく京都。

ルアンパバーン① あのね、ラオスは場所じゃないの。

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ルアンパバーンという場所を知ったのは、とある読書会で取り上げられた本でだった。


A Fortune-Teller Told Me: Earthbound Travels in the Far East (English Edition)

 

アジアを拠点とするイタリア人ジャーナリストが書いた旅行記。著者は1976年、香港でとある占い師にこう告げられる。「1993年には、一度たりとも飛行機に乗ってはいけない。もし乗れば、命を落とすことになる」

 

1993年などまだ遠い未来のように感じた彼は、その時は半分聞き流していたが、1992年末にその予言を思い出し、翌年は飛行機に乗らず、どこに行くにも(イタリアに帰るときにも!)地を這って移動すると決める。

 

その「因縁の年」に、彼が最初に訪れたのがルアンパバーンだった。水墨画のような山々に囲まれ、悠々と流れるメコン川と、静かなナムカーン川に挟まれるようにたたずむ緑の谷。町の中心にあるプーシーの丘からは、点在する数多くの寺院がきらきらと輝いて見える。

 

「るあんぱばーん」という響きと、そんな街の描写が印象的で、いつか行ってみたいなーとうっすらと思った。行ってみたい!という強い衝動ではなく、心のどこかに「るあんぱばーん」という地名がふんわりと落ちた感じ。

 

なかでも、ぐっと心をつかまれたのがこの部分だった。一部引用します。

I set foot in Laos for the first time in the spring of 1972. On a small balcony of the Hotel Constellation in Vientiane a blonde hippie girl was smoking a marijuana joint so strong you could smell it all the way up the stairs. Seeing me approach, she whispered to me, as if confide a secret formula for understanding all things, 'Remember, Laos is not a place; it is a state of mind.'

Tiziano Terzani『A Fortune-Teller Told Me: Earthbound Travels in the Far East』Chapter Three: On Which Shore Lies Happiness? より

 

初めてラオスの地を踏んだのは1972年の春だった。ビエンチャンにあるコンステレーションホテルの小さなバルコニーで、金髪のヒッピー娘がマリファナを吸っていた。階段の上からでも、それとわかる強烈な匂いだ。近付いてくる私を見て、彼女は何もかもが解ける秘密の方程式を打ち明けるかのようにささやいた。「あのね、ラオスは場所じゃないの。精神世界なのよ」

(拙訳)

 

なんですかこの映画のワンシーンのようなセリフは。この金髪娘は、西洋人なのか、それとも髪を染めたラオス人なのか。それによって印象もだいぶ変わる。どっちとも取れる。どんな人物を想像するかは、読んだ人の自由。それが文章の面白いとこだなあ。

 

ともあれ、もし、この本を読んでいなかったら(まだ読み切れていないけど)、ルアンパバーンに行くことはなかったかもしれない。ほらまた点がつながった。