大家マルちゃん その参
マルちゃんのアパートを借りて2か月半たった。相変わらず、たまにお昼ごはんを差し入れしてくれる。
マルちゃんちには数々の細かいハウスルールが存在する。
- キッチンやバスルーム、洗面台を使った後は、シンクやバスタブの中まですべて水しぶきを拭きとること
- 洗濯機は週に一度(それ以外は手洗い)。洗濯ものを入れたら、スイッチは必ずマルちゃんに押してもらうこと(自分で押すことは許されない)
- 洗濯ものを部屋干しするときは、ベッドルームに干してはいけない(寝る部屋に洗濯もの干すとかありえなーい、という理由らしい)
- 夜は必ずブラインドを下ろすこと
- 冷蔵庫のポケット部分には、1.5Lペットボトルで水が3分の1くらいになるまでは入れてはいけない(重みで扉が下がるから、らしい)
そのほかにも細かいのがまだまだあるんですが、まあ主なのはこんな感じ。洗濯ものの干し方についても指導を受けたことがある。
ちょっとでも違うことすると即座に教育的指導が入る。正直、私がかなりおおざっぱな性格なので、逆に守れている気がする(何言われてもあんまり気にしないから)。さすがに毎日ではなくなったとはいえ、未だにときどき教育的指導は受ける。でも、なんだかマルちゃんは私のことが結構好きみたいだ。
マルちゃんは1日に何度も私が借りているアパートにやってくるので、毎日顔を合わせる。1か月を過ぎたくらいのころから、明らかに表情が優しくなった。結局、私のイタリア語はまーーったく上達しなかったので、あまりまともな会話はできないけれど、「今日はどこ行くの」とか「何してたの」とかくらいなら、なんとなく話は通じる。
いろいろ、私の私物の世話もやいてくれる。ちょっとほっといてほしいけど、そうはいかない(笑)。くだものかごのメロンがいつのまにか冷蔵庫に入れられていたり、洗濯ものを干しっぱなしで外出していると、全部とりこまれていたり。この間は、黒っぽい私の下着を見て、「私は白い下着しか身に着けないよ」と、突然びろーんと自分のスカートをめくって、白いデカパンを見せてくれた。なんというか、お茶目だ。
ベランダに出ればお隣さんと長々とおしゃべり。イタリア人てほんとしゃべり好き。街を歩いていても、みんな電話でしゃべりながら歩いている。日本ではスマホはほぼ電話としては使われていないけど、イタリアではちゃんと電話だ。
ここにいられるのもあと1週間。ハウスルールはしちめんどくさいけど結構なれたし、なんといっても周囲の環境がとても気に入っているので、できればそのうちまた来たいなあ。マルちゃんも「戻って来てもいいよ」と言ってくれている。「あんたは家をちゃんときれいに使っているから」と(そりゃ言われたとおりやってるからね)。
イタリア語が全然上達しなかった言い訳ってわけではないけど、ことばがあんまり通じないコミュニケーションも、それはそれでなんだかおもしろい(でも戻ってくるなら、インターネットなんて無縁のマルちゃんには日本から電話しないといけないから、やっぱイタリア語どうにかしなきゃー)。
つやっつやに元気なマルちゃんのバジルと、しおしおの私のバジル。なんなのこの差。