大家マルちゃん
今回滞在するお部屋は、フィレンツェ在住の知人に紹介してもらった。フィレンツェの中心部からトラムで数駅、がんばれば歩いても行ける距離。年金暮らしのイタリア人ご夫婦の娘さんが使っていたアパートで、大家さんは階下に住んでいる。
建物は古いけど、床も水回りもぴっかぴかに磨き上げられていて、とてもきれい。緑がいっぱいの中庭を見下ろせるベランダもある。ここを基本的にひとりで使わせてもらえる。なんて贅沢。
しかし、ここまできれいに保つには、もちろんそれなりの努力が必要。この家には事細かいハウスルールが存在する。荷物を運びこむと、家ラブな大家さんのマルちゃんが、さっそくいろんなルールを語り始めた。なにしろ、イタリア人らしくしゃべるしゃべる。私がイタ語がわからなかろうが関係ない。初日は知人が大家さんとの通訳をしてくれたのでめっちゃ助かった。
実は、私の前に入っていた女の子がこのハウスルールをことごとく破ったうえ、家賃を半月分踏み倒して行ったらしい。なので大家マルちゃん、新しい店子の私を少し不安に思っているかもしれない。イタ語も解さないし。大丈夫だよ、ルールはちゃんと守るから!
とはいえ、このハウスルールがほんと細かい。例えば、洗面台やキッチンのシンクは、使った後シンクの中まで水しぶきを一滴残らず拭わなければならない。もちろんシャワーのあとも、バスタブの水を全部拭かなければならない(石灰がついて白くなっちゃうから、らしい)。
以前も、きれいずきな人とハウスシェアをしていたことがあるので、シャワーのあとの鏡とかガラス扉の水滴をぬぐう、くらいはやったことあるけど、シンクの中まで拭かなければいけないのは初めてだ。うん、やるよ。だって、せっかくすてきな部屋を紹介してくれた知人の顔をつぶすわけにもいかないし。まあ、ここまでやらなければこれだけきれいに維持できないよね。よく、モデルルームみたいにきれいにしている家を見て、なんでこんなにきれいに保てるんだろう、と思っていたけど、やっぱこれくらいのことは必要なんだね、というのがよくわかった(だって水栓とか水回りはほんとすぐ汚れるもんね)。
とりあえずハウスルールを忠実に守っているので、大家さんとの関係は良好。マルちゃんは用事でしょっちゅうやってくるし、ときどきおうちのごはんをおすそ分けしてくれることもある(嬉しい!)。古き良き時代の下宿みたい。相変わらず、こっちがわかっていようとわかっていなかろうと、イタリア語でべらべらまくしたてる。私は、知ってる単語だけ拾って、「かぴーと(わかった)」と「のんかぴーと(わからへん)」で相槌を打つ。
マルちゃんとちゃんと会話できるようになるまで、いったいどれくらいかかるだろう。まずは、1日5センテンスくらい「昨日は~しました」「今日は~します」という文章を作っておいて(Google翻訳さんありがとう!)、毎日マルちゃんに報告するところから始めよう。